いよいよ待ちに待った手術の日である。釘を抜くと書いて「ばってい」と読むようだが、釘に限らずネジやプレートを抜くことの総称らしい。

全身麻酔をしても垂れ流しにならないように、朝一番に浣腸をして腸の中を空にしておく。火曜日は整形外科の手術日であるため、前回は手術をする患者が処刑を待つかの如く行列を作ったのだが、今回はなかった。朝食の時間になっても手術前絶食の身ゆえ食事は無かったが、代わりに点滴が始まった。

今回は朝9時開始なので最初の順番のようだ。前回は最後の3番目にあたり前の患者が延長していたので、手術の終わる頃には付き添い控え室の人気が無くなり家族が寂しい思いをしたのだが、今回はそんなことはなさそうだ。

昨日病棟で最初に応対してくれた綺麗な看護婦さんに先導されて手術室に向かった。時間に余裕を持って来たが手術室の受け入れ準備がまだ完了しておらず前室で待たされた。前室でというのは、手術室の中で待たせて不安になることの無いようにとの配慮であったが、こちらとしては滅多に入れない手術室の中を観察した方が面白い。その旨看護婦さんに伝えると、手術室内の最終チェックを済ませると直ちに通してくれた。

手術室に入ると早速手術台に上がり横になった。胸には心電図の電極が取り付けられ、左腕には血圧計が巻かれた。まもなく西本先生登場。まだ時間があるので辺りをきょろきょろと見回した。全部で7部屋ある手術室は手術の目的毎に固有の構造になっているそうだが、今回入った7号室は外科の手術向けだそうだ。天井からは5本のアームが伸びていただろうか。3本は照明用で、それぞれ大、中、局所用の照明装置が備わっている。別の1本にはレントゲンの装置が装備されているが、正面像しか撮れないのであまり使っていないそうだ。残りの1本には良く判らないリング状の金具に4本棒が付いていた。

時刻は9:15。まもなく麻酔が始まった。前回は点滴からの導入で一瞬にして意識を失ったが、今回はガスからだった。酸素マスクを差し出され、良い匂いがするから吸うように指示され従った。続いて麻酔ガスで深呼吸をする。息をするごとに意識が遠のき、やがて失った。

意識が回復すると、、時計の針は10時半を指していた。1時間15分麻酔が効いていたことになる。意識はまだ寝起きの状態だが、ストレッチャーに移され病室に運ばれているのが判った。最後に病室のベッドに下ろされる軽い衝撃を感じ、心電図の電極を取り付けられると、一通りの作業が完了した。

夕方には摘出されたばかりの肩鎖関節プレート一式を看護婦さんが届けてくれた。記念というかお守りとして貰えるように手術前に手配しておいたものだった。寝たきりの状態では包みを開けてみることもできず、とりあえずそのままテーブルに置いておいた。。

朝一番の手術はまたされなくて済む反面、終わってからが長い。僅か1時間の手術が終わってしまえばこちらは健常人のつもりだが、明日の朝まではベッド上で安静、つまり寝たきりの状態を強制される。一番空腹を感じる夕方から夜にかけては、前回は麻酔が効いていたが、今回は意識がはっきりとあり腹ペコの盛りであった。

しかし、例の若くて綺麗な看護婦さんが1時間おきに容態をチェックしにきてくれた。若いが一つ一つの動作が一生懸命しっかりしており、とても頼りになった。幸せであった。看護婦さんの見回りは準夜、深夜と引き継がれて、熱に苦しまされることも無く朝までゆっくり休むことができた。